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毎日新聞出版『サンデー毎日』で連載中の「会社の流儀」がWeb版で登場。中堅・中小企業の隠れた素顔や取り組みを紹介します。

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ジャパン・エンヂニアリング(シリーズNo.1048)

ビジネス界の常識を変える社内体制!
業績を伸ばし続ける総合加工管メーカー

 南雲 一郎 社長

 元気のない若者男子の代名詞「草食系」。この言葉に代表されるように、近年は若者の上昇志向が低下し、企業における昇格を敬遠する若者が増えてきている。そんな中、「昇格希望自己申告書」という一風変わったユニークな昇格制度を実施している会社がある。
 1973年第1次オイルショックの年に、水道用塩ビライニング鋼管フランジ型の製造会社として設立されたジャパン・エンヂニアリング株式会社だ。
「設立以来、お客様の困っていることを『出来ない理由を熱心に探す代わりに、出来る理由を必死に考えよう』『不可能と思う前に可能だと思う道を考えよう』と、従業員と共に一丸となって解決してきました」
 と語る南雲一郎社長は、三機工業㈱を円満退職した後、30歳で同社を設立。2006年には排水管再生工事に進出し、パイプの中に新しいパイプを形成する全く新しい工法、「インパイプフェニックス再生工法」を開発した。現在は総合加工管メーカーとして確固たる地位を確立し、売上高は30億円までに成長している。
 同社では、冒頭に述べた「昇格希望自己申告書」の他にも、ユニークな社内制度を実施。工場や現場で起きた問題をコミュニケーションアプリLINE(ライン)を通じて投稿、社員全員が把握しサポートできる「リアルタイムサポート」や、業務上の失敗事例を再現実験することで、他部署も体験し、具体的な失敗理由を明らかにする制度。また、南雲社長の「あいまいさを無くし、具体的な話をする」考えに準じて、指示した人ではなく、指示を受けた人が書く「指示確認書」という書式を導入している。
「『失敗した』だけでなく、失敗から何かを学び、社内全体で共有することが大切です。他社の失敗も自分達に置き換え、日々学んでいます」(南雲社長)
 今年の10月1日には「職階に求められる役割と責任」と題し、社内体制の明文化を発表予定だ。中身を紐解いて見ると、従来のビジネス界の常識を覆す内容が書かれている。
 例えば報告、連絡、相談の「ホウレンソウ」は、果たして報告が1番初めで正しいのかと疑問を感じ、分析・細分化。そして作り上げられたのが、「KSJKHサイクル」だ。Kとは計画、Sは相談、Jは実行、Kは確認、Hは報告を意味する頭文字になっている。
「報告が1番初めでは、失敗した場合、事後報告になってしまいます。失敗する前にまず、自分で計画をたて、相談をする。そして実行し、確認をする。その結果を報告し、社内教育委員会にかけ、失敗を共有して学ぶのが『KSJKHサイクル』です」(南雲社長)

工事の期限厳守を支える
パイロット施工とは?

 さらに、社長から司令塔へ出される指示は、副司令塔を通して現場に伝えられ、報告は現場から副司令塔へ。その後、副司令塔から司令塔へ伝えられるとともに、司令塔は各現場に確認の連絡を入れている。
「報告を現場から受けることで結果の摺合せが行えます。血液に例えると、動脈だけでなく、静脈を作ることになります」(南雲社長)
 失敗から何かを学び、学んだものを社内で共有する。このサイクルを繰り返すことで、業務改善に繋げる。40年近く同社が着実に成長を続けてきた秘訣だ。こうした日々の業務改善の中で、排水立て管の更生方法や管体の再生方法など7件の特許、ARFAコートやインパイプフェニックスなど5件の商標登録を取得し、オンリーワンの施工方法を生み出し続けている同社。
 高度経済成長期のニュータウン造成計画で各地に次々建設された集合住宅は、約半世紀を経た現在、老朽化し、それをリニューアルして生まれ変わらせる大規模修繕が相次いで実施されている。多くの住民が暮らし、ライフスタイルも様々な集合住宅の工事は、期限内に終わらせるのが必要不可欠だ。そこで同社では、本工事の10日前に実際のマンションで試験的な工事を行う、「パイロット施工」を行っている。

100年企業と設立45周年
売上高40億円を目指して

「『パイロット施工』で判明した不具合や段取り違いを、本工事までに改善することで、決められた期限で工事を終わらせます。期限厳守は多くのお客様から評判を呼び、大変喜ばれています。作業終了後には、誰も見ていなくとも、甲子園球児が球場に礼をするように、必ず現場に向かって感謝の礼をしています。決して安くはないお金を頂いて作業しているので、感謝を伝えることは当たり前のことです」(南雲社長)
 100年企業と、3年後に迎える設立45周年の売上高40億円を目指し、社内体制の明文化を策定した南雲社長。「失敗から何かを学び、社内全体で共有する」サイクルは、ベテラン社員や中堅、若手にも伝えられ、南雲社長が培ってきたDNAは継承されていくだろう。そうした社内体制の継承が、45周年の売上高40億円という受注にも耐えられる社内体制に繋がり、100年企業への布石となっていく。
「開発の原点は、『お客様の困り事を解決する』気持ちから生まれています。人は必ず3~4回失敗するものです。その失敗を責めるのでは無く、何かを学ぶことが『成功の母』になっていきます」(南雲社長)
「失敗から学ぶ」と共に、「情報の共有化」にも注力している同社。仕事における自分の立ち位置を把握でき、会社のベクトルが1つにまとめられる「情報の共有化」は、何も隠さないオープンな経営と言える。
 御年72歳を迎えた南雲社長。取材中に伝わってきた元気の秘密を伺ってみた。
「仕事を嫌々やらず、楽しみながらがんばることです。後10年は現役を続けていきますよ」(南雲社長)
 同社では多くの生き物を育み、生きていくために必要な水の大切さを改めて見直し、清らかに流れる川の水のように良質で安全な水を効率よくお客様に届ける『清流宣言』に取り組んでいる。今後も常に新しい発想で業界を一歩リードする同社の取り組みは、見えない所で私たちの生活を支えていくだろう。

【会社データ】
本社=東京都文京区本駒込2―27―15 JESビル
☎=03―3945―1497
設立=1973年1月
資本金=1億円
売上高=30億円
従業員=141名
事業内容=ステンレス・ポリ粉体ライニング・塩ビライニング鋼管加工、排水管再生管工事等
http://www.japan-eng.co.jp

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