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毎日新聞出版『サンデー毎日』で連載中の「会社の流儀」がWeb版で登場。中堅・中小企業の隠れた素顔や取り組みを紹介します。

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文庫屋 大関(シリーズNo.1396)

伝統の技と革新的な売り方・働き方
色彩豊かな「文庫革」の老舗ブランド

田中 威 社長

 東京の花街として栄えた向島。今も下町の風情と風光明媚な趣を残すこの地で、若者からも人気を集める皮革の伝統工芸がある。それが「文庫革」だ。
「文庫革の特徴は鮮やかな色彩と80種類以上ある美しい文様。その組み合わせは無限大に存在し、お客様や贈り先の好みに合わてお選び頂くことができます」
 と語るのは、「文庫屋 大関」の屋号でオリジナルの袋物・小物をブランド展開する有限会社田中商店田中威社長。和柄はもちろん、西洋調やオリエンタルな柄まで実に豊富なパターンでリクエストに応えている。

 文庫革の源流は播州姫路の革細工。白革に型を押し、一筆ずつ彩色を施した後、漆で古びをつける「錆入れ」の行程が秘伝の製法だ。この伝統的な製法と「文庫革」という名称を用いているのは、日本で同社だけである。
 横浜で修業を積んだ田中社長の母方の祖父、大関卯三郎が向島で独立してから、今年で創業90周年を迎える同社。現役の彩色職人である叔母・大関春子氏の技術を次代に残すため、eコマース黎明期の2000年からネット通販を始めた。
「選ぶこと、迷うことこその楽しさを味わって頂きたい」と話す田中社長は、訪問者を1~2時間滞在させ、じっくりと回遊してもらう独創的なホームページを作成。「大関」ブランドへの認知と販売に大きな力を発揮するだけでなく、彩色をはじめとする職人たちの確保にも繋がっている。実際、年間で50名ほどの職人志望者が同社の門を叩くという。
 現在、本社に併設した工房では20名近い職人たちが腕を磨く。職人のカジュアル化を目指す田中社長は、技術を身につけた後に独立し、ライフスタイルに合わせて仕事ができる新しい職人の働き方を実践している。
「従来の“見て”技を盗む〟という徒弟関係だけで職人を育てることは難しくなりました。働き易く、将来に夢を抱ける環境を用意することで技術を残していきたいですね」(田中社長)
「時給制+工賃」という給与体系を約7年前から採用しているほか、独立した職人たちとのネットワークを使って各作業工程を効率良く進める仕組みを整えた。

“楽しめる”店舗づくり
銀座にも新店舗出店予定


 12年に浅草の実店舗を構えて以降、卸売から自社販売へと販売方法の主流を切り替えた同社。商品だけでなく店舗のファンも増やし続けるブランディングの根底にあるのは、質の高い教育である。今年前半には銀座で2店舗目をオープンする予定だ。
「作り手の考えが上手く伝わっていないと感じ、自社販売に切り替えました。私自身が図面を引き、設計から店内のレイアウト、季節に合わせた生け花までこだわった店舗を作っています」
 と話す田中社長は、「豊富な経験を持つ方でも、簡単には当社の販売はできない」と言う。ホームページと同じく、「いかに楽しく滞在して頂くか」を徹底的に追求した接客がサービスの画一化を防ぎ、高い顧客満足を生み出している。


【会社データ】
本社=東京都墨田区向島1-15-9
☎=03-3625-8238
設立=1960年4月
資本金=300万円
従業員数=29名
事業内容=文庫革製品の製造・販売
http://www.bunkoya.com

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