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毎日新聞出版『サンデー毎日』で連載中の「会社の流儀」がWeb版で登場。中堅・中小企業の隠れた素顔や取り組みを紹介します。

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名古屋モザイク工業(シリーズNo.1175)

幾多の困難を乗り越え真のV字回復目指す
地場産業を牽引する創業77年の老舗タイル商社

加藤 守孝 社長

 岐阜県東濃地方は古くから美濃焼とタイルの産地として知られている。地場産業のご他聞に漏れず、ここも長らく地盤沈下を強いられているが、そんな中でも異彩を放ち、着実に全国展開を果たしてきたのが、1938年名古屋市で創業し、現在では創業者の故郷・多治見市笠原町に本社を置く老舗タイル商社、名古屋モザイク工業株式会社加藤守孝社長)だ。


 そんな同社に2008年9月のリーマンショックの折、最大の危機が訪れる。

為替差損と市場収縮の
Wパンチを克服

 同社はリーマンショック以前にメガバンク2行と月90万ユーロの為替デリバティブ契約を行っており、リーマンショック後の急激な円高による高額な為替差損の決済と、景気の落ち込みによる大幅な売り上げ減少の影響を受け、資金繰りに苦しむことになる。
 90万ユーロの内60万ユーロはある大手メガバンクとの契約によるもの。最後の契約は08年7月、同社の柱である輸入品の原価が今後も高くなるのに歯止めをかけ、原価を固定すべきと執拗に契約を勧められ、銀行借り入れが不可欠な立場から、むげには断れない所を攻められての契約だった。
 しかしその後の同社の調べで、契約を勧めた2ヶ月前の5月に発行されていた同銀行系列のシンクタンクのレポートには、今後年末に向けて為替は円高に進むことが明記されていた。
 同社では、「為替のプロが知りえた情報を開示せず、今後も円安になることが前提の契約を素人同然の中小企業に勧め、総額10億円もの損害を出させた行為は如何なものか」と、今、異議申し立てをしている。
 急激な円高による為替差損の決済は13年7月まで続く。売上は09年度57億円まで減少し、その上最高4500万円もの為替差損を一切借り入れなしで毎月決済し続けた。
「この厳しい状況を乗り越え、12年度売上で90億円、経常利益で10億円を計上できるまでに業績が回復したのは、社員の努力・頑張りはもとより、お客様や仕入れ元のメーカー各位のご理解とご協力の御蔭と心から感謝しています」
 と、加藤社長は当時を振り返る。
 円安、株高の国策誘導による景気の回復がマスコミを賑わしているが、タイルの産地、多治見・笠原ではアベノミクスの恩恵どころか、原油の輸入価格が半値に下がっているにも拘らず円安で帳消し、コスト高に苦しんでいる。
 それに拍車をかけているのが国の行政指導だ。
 ビルの外装タイルが落下するのを予防するために、10年ごとにタイルを叩いてタイルが浮いているかどうかを確認する作業を義務つけたものだ。
「それではタイルを貼るなと言っているのと同じこと。もっとタイルの良さを知ってほしい。今ユネスコの産業歴史遺産として注目を浴びている長崎『軍艦島』。ここで2年にわたってコンクリートの劣化調査をしている東京理科大学の今本准教授の調査結果では、海風の厳しい環境下で、タイルを貼った内側のコンクリートの劣化は殆どなく、逆に貼ってないところはボロボロに風化していることが証明されています。コンクリートの寿命では70年で劣化が始まるといわれているが、100年以上たった軍艦島で、そのコンクリートをタイルがしっかり劣化防止している事実をもっと広く知って貰いたい。更に光触媒効果の機能を持つタイルは、大気中のSOxやNOxを無害化する等タイルの持つ効用は単に見栄えを良くするだけではないのです」
 と、加藤社長は強調する。
 また、「今後は外装・モザイクタイル生産の中心地、多治見市笠原にも新規情報発信センターを作り、業界全体の活性化に繋げる」という掛け声で始まり、来年6月オープン予定の「多治見モザイクタイルミュージアム」は名前のとおり産業博物館の枠を嵌められ、建物も小規模で、そこで展開される事業の中身は、「新規情報発信センター」として機能するには程遠い規模のもの。一社一社の努力だけでは出来ない業界振興の拠点として設立した新しい「公設民営」の仕組みは、結局従来型の行政主導の箱物として、厳しいスタートとなる。
 さらに追い打ちをかけるのは、原料の枯渇問題だ。
 タイルには土が必要だ。今その土が取れなくなるのではないかと心配されている。上質な粘土の採掘では、東濃地区は古くから全国でも有数の産地としてこの地区の陶磁器産業を支えてきた。今それがうち続く大規模企業の進出で建物が建ち、下に眠る資源が採掘不可能になってきているのだ。
 多治見市が呼びかけて土岐市、瑞浪市を巻き込んで資源対策協議会が昨年の暮れにキックオフしたが、以来一度も次の会議が開かれていない。資源問題よりも新しい企業誘致の話が先行しているように見える。
 地方の資源を都会に取られっぱなしの状況から、「取られっぱなしの資源を取り返そう」運動が全国あちこちから聞こえてくる中、この地方の取り組みが見えて来ないのが心配だ。

ショールーム展開と人材力強化で
全国にタイルの魅力を発信

 そんな苦境を打開するための同社の強みのひとつがタイル専門のショールームの全国展開である。
 同社は08年7月にタイル専門のショールームとしては全国的にも最大級のものを名古屋にオープンさせたが、その後のリーマンショックで後が続かず、しばらく現状維持状態が続く。しかし業績の回復とあいまって、13年6月に広島、9月に福岡、15年2月には仙台を拡張オープンさせ、さらにこの10月には福岡の増床オープンを実施する。タイル専門ショールームとしてはそれぞれの地域で一番の広さと品揃えを整え、各地域でのタイル需要の拡大に努めている。今後も静岡、沖縄にも整備を検討中だ。
「タイル市場のこれ以上の収縮を止めるには、まず『来て、見て、触って』タイルのよさを知って頂くことが一番であるし、タイルを使いたいという方に満足して頂けるだけの営業的ソフトパワーを備えなければいけない。タイル販売のプロとして一流の人材の整備が伴って初めてショールームが生きる。社員のレベルアップと優秀な新人の確保が現在の急務です」
 と、加藤社長は今後の課題を語る。
 また、同社は商社である。生産手段をもたない企業の生産性を上げるには、人材力の強化が最優先課題であると考える同社。12年度期経常利益で10億円を計上して以来、13年度、14年度と売上、粗利はほぼ横ばいで推移するが、そんな中でも総人件費は毎年1億円ずつ増加させている。社員も増員になっているが、社員の平均年俸は12年526万円から15年583万円へと増えている。まだ大企業には追いついてはいないが、あと僅かの努力で追いつくところまできた。
 規模の大小ではなく、仕事の面白さや、職場環境の良さ、どこにも引けを取らない待遇の良さを担保することで一流の人材を確保することが、中小企業の生き残る条件と考える同社の今後に期待したい。  

【会社データ】
本社=岐阜県多治見市笠原町2455―20
☎=0572―44―3060
創業=1939年
資本金=8500万円
社員数=119名
事業内容=タイル・レンガ・石材等の商社
http://www.nagoya-mosaic.co.jp

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