女性活躍・働き方改革を推進する名門鉄鋼商社の挑戦
木下 幹夫 社長 「激動の外部環境変化へ対応するには内部変革が必要不可欠です」 と話すのは、日本の鉄鋼業の黎明期に創業し、長きにわたり鉄を供給することで日本のものづくりに貢献してきた鉄鋼商社・株式会社カノークスの木下幹夫社長。 自動車業界に強みを持ち、売上高は1000億円を超え、経常利益20億円近くを稼ぎ出す優良企業がなぜこうした危機感を抱くのか。まずは歴史を紐解く必要があるだろう。 今から120年前の1897年、初代社主・加納小太郎が名古屋市に鉄鋼販売業を生業とする「岐阜屋梅吉商店」を開業(後に「加納小太郎商店」と改称)。やがて大正時代に入り、当時優れた鉄鋼生産国であった英国やベルギーから鉄を輸入し始め、程なく会社組織を「合名会社加納商店」に法人化した。当時の国産鋼材はほとんどが軍需向けであったため、同社は民需向けの鋼材として輸入を開始。そして、第二次世界大戦中は国家奉仕を宗とする商いを続け、戦後はGHQによる鉄鋼統制の下、指定問屋として日本の復興に寄与してきた。
そして、1948年には会社組織を株式会社に改め、続いて1958年に「加納鉄鋼株式会社」に改称、1961年には名古屋証券取引所に株式を上場した。 余談になるが、同社応接室の壁には一枚の感謝状が大切に掲げられている。近づいて見ると「昭和24年1月20日 トヨタ自動車」と書いてある。テレビドラマ化もされていたのでご存知の方も多いとは思うが、トヨタ自動車の戦後の厳しい時期とも一致する。ドラマでは主にトヨタ自動車と銀行との確執が描かれていたが、この世界的自動車メーカーを陰ながら支え続けていた会社があったことを記しておきたい。 1962年に鉄鋼専門商社として東海地区で最初に「鋼材加工センター」を竣工させ、「『ジャスト・イン・タイム』にスケッチサイズの商品をお届けする」と銘打ち業容を拡大。今では当たり前のように使われている「ジャスト・イン・タイム」への対応を50年前には整えていたことには少々驚いた。 その後のオイルショックや国内空洞化による鉄冷えの時代を乗り越え、1991年、商号を現社名である「株式会社カノークス」に変更し、今年12月には創業120周年の節目を迎える。従来型ビジネスからの脱却持続的な成長を目指して このように取引先からの信頼も厚く、数ある鉄鋼商社の中でも主力の一社としての地位を確立している同社だが、木下社長は冒頭の言葉通り、2013年の就任当初より危機感を抱いていたという。「鉄とともに歩んできた120年という歴史が逆に弊害になっているような気がしました。それは、鉄鋼業界は男性中心社会で女性の活躍が難しいという社内風土があったからです。その他にも、事業環境の面では国内鉄鋼需要が大きく伸びることはないですし、雇用に関しても急速な少子高齢化で優秀な社員の採用が難しくなってきています。ならば内部変革が必要であり、『働き方改革』を実践すべきだと考えたのです」(木下社長) まず改革の手始めに、2013年10月より意識改革や業務効率向上を目指した「カノークス・ワン活動」を開始。「課をひとつに活動」「真・課をひとつに活動」を通じて、ベテランから若手まで組織内における相互理解をより一層深めようという取り組みである。 次に第二段階では木下社長自らが座長となって、全女性社員参加による「カノークス・ウーマン活動」を発足。2014年10月に、女性の戦力化と職域拡大のため、当時29名いた女性嘱託契約社員を全て正社員契約とした。同時に、愛知県が進める女性活躍促進の動きと連携し「女性の活躍促進宣言」に登録。取り組みの本気度を社内外に周知させるためだ。「女性にとって働きやすい環境は男性にとっても働きやすいはず。具体的な活動方法は全国で9チームに分け、活動報告は主にテレビ会議を利用しました。意見出しから始まり、課題対応、各種社内制度の見直し・変更、そして役職員の意識の一体化と今後の方向性の確認を行いました」(木下社長) 成果の一例をあげてみよう。育児・介護休業に関しては法令を上回る制度に拡充。法律では育児休業は子が1歳になるまでと定められているが、同社では子が2歳になるまで可能とし、介護休業期間は、国の定めが通算93日間であるのに対し、通算365日間まで認めるといった具合に、社員が安心して働ける実のあるワークライフバランスを実現している。「あいち女性輝きカンパニー」優良企業表彰 木下社長の強い想いとリーダーシップに導かれた改革は自治体からも高い評価を受け、2016年12月の「あいち女性輝きカンパニー」優良企業表彰に続き、2017年1月には「愛知ファミリーフレンドリー企業賞」受賞という嬉しいニュースが舞い込んだ。「あいち女性輝きカンパニー」優良企業は301人以上の部でトヨタ自動車、中部電力、東海東京証券の中部地方を代表する3社が表彰を受け、300人以下の部では同社ただ1社が選ばれた。男性中心のイメージがある鉄鋼流通から選出されたことにも価値があると言えるだろう。「改革はまだまだ道半ばではありますが、このような評価は励みになります。現在は『働き方改革推進チーム』を発足させ、カノークス・ウーマン活動の継続検討事項を踏襲しつつ、人事制度の改革等に取り組んでいます」(木下社長) 今後は社内改革とともに、既成のやり方にとらわれない若い人材のユニークな着眼点にも目を向け、建材や鋼管部門などの非自動車分野の新規ビジネス構築にも力を入れていく同社。愛知の名門鉄鋼商社が作る新たな歴史にこれからも注目していきたい。 【会社データ】本社=愛知県名古屋市西区那古野1―1―12☎=052―564―3522設立=1948年1月資本金=23億1000万円(名古屋証券取引所第二部上場)社員数=191名売上高=1091億7600万円(2016年3月期)事業内容=鉄鋼及び鉄鋼関連製品の販売http://www.canox.co.jp
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