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毎日新聞出版『サンデー毎日』で連載中の「会社の流儀」がWeb版で登場。中堅・中小企業の隠れた素顔や取り組みを紹介します。

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小黒組(シリーズNo.1218)

都市建設を支える鉄筋工事のトップランナー
創業85年の歴史が確かな技術力と信頼の証


内山聖 会長 

千代田則雄 社長

 威容を誇る名立たるランドマークも、コンクリート構造物は全て網目状に組まれた鉄筋という骨組みによって支えられている。完成後は鉄筋の骨組みはコンクリートに覆われて見えなくなるが、それだけに鉄筋工事に携わる事業者の技術力、信頼度は重要性を増してくる。
 専門性が高く、古くから専業化が進んでいた鉄筋工事業界において、1930年の創業以来、時代の変遷とともに技術を培い、常に最先端をひた走ってきたのが鉄筋工事業界のトップランナー、株式会社小黒組だ。


 鉄筋加工組立業として墨田区で創業した同社は、1949年、現本社のある亀戸工場創業を経て54年、初代小黒末吉社長就任時に法人設立。67年には船橋市に工場を移転し、92年には亀戸に現本社ビルを新築完成させた。高度成長期からバブル期に至るその間、親族間で2度の代替わりがあり、バブル崩壊の93年、5代目代表として縁戚関係から登用されたのが現会長の内山聖氏だ。
 内山社長時代には、初代社長が60年前に掲げた経営理念「安全と責任施工は小黒組の誇り」を旨に、2000年に品質管理の国際規格ISO9002を、03年にはISO9001:2000の認証をそれぞれ取得。その理念は約90社に昇る協力会社の職長、職人たちにも共有され、創業以来死亡災害ゼロという実績に繋がっている。
 そして2010年、創業家以外からは初めて6代目代表に就任したのが、50年千葉県生まれの千代田則雄社長だ。千代田社長は、74年日本大学建築学科卒業後長谷川工務店(現長谷工コーポレーション)入社。数多くの建設現場の現場監督を経験した後、長谷工のリフォーム部門の立ち上げに参画。現在活況を呈するビル・マンションの大規模改修事業の草創期から参加し、事業化を推進した張本人だ。
 小黒組にとって長谷工コーポレーションは主要取引先の筆頭格。かねてから後継者は一族以外からと考えていた当時の内山社長は、長谷工に適任者の招聘を依頼。白羽の矢が立ったのが千代田社長だった。07年のことだ。当初は出向で常務執行役員に着任、翌年には転籍して専務取締役に。07年には、内山社長が公益社団法人全国鉄筋工事業協会(略称・全鉄筋)会長に就任。そして10年、内山社長は会長職に、千代田社長が誕生する運びとなった。
 内山会長を「おやじ」と呼ぶ千代田社長。内山会長の「小黒組を日本一の鉄筋工事専門会社にしたい」との思いは確実に千代田社長に引継がれている。現に、就任5年目の14年12月期決算の売上高76億円は、全国の鉄筋工事業3775社中、堂々の1位(帝国データバンク調べ)。名実ともに鉄筋工事業界のトップランナーの位置につけている。

全鉄筋会長職を務め
鉄筋工事業界発展に尽力

 去る11月5日、東京・千代田区で「全鉄筋」〈創立50周年記念式典〉が開催された。その冒頭挨拶の壇上で内山会長は、業界全体が抱える課題解決に向けて、次のように決意を述べた。
「21年前からの外国人技能実習生・研修生の受け入れや、社会保険への加入促進、登録基幹技能者制度への取り組み、高校生を対象にした出前講座の実施など、当協会は他の専門工事業団体に先んじて取り組んできました。今後は、2次下請けの会社についても、先陣を切って社会保険100%加入を推進していきたい。また、耐震偽装問題などで建設業は傷つきましたが、それを教訓として安心・安全な構造物を国民に提供するため、自主配筋検査を行い、施工ミスを防止する活動に取り組んでまいります」
 実際に、今年10月には業界初の技能グランプリが開催され、来年以降も継続実施されるほか、技能検定3級のトライアルが今年度実施され、来年度後期には本試験が実施見通しとなるなど、業界を挙げて技能向上に向けた取り組みが活発に行われている。
 全鉄筋会長就任4期目を務める内山会長は、特に、若者の業界への入職を促進するための「仕事の内容を知ってもらう」活動に熱心だ。先に述べた工業高校への出前講座の実施やインターンシップの受け入れは、都内のみならず全国に広がりつつあるという。

「地図に残る仕事」
直用工採用に意欲

 東京スカイツリーの竣工に見られるように、建設技術は日々刻々と進化し、鉄筋工事に求められる技能・品質・安全性の確保もますます高度化してきている。
 その高度化に呼応して同社は、千代田社長就任後の12年、業界では初めて建設業労働安全衛生マネジメントシステム(COHSMS)の認証を取得した。こうした安全への高い信頼性が、発注側のゼネコンや協力会社の職長、職人との強固な関係を築き上げてきた。
 固い絆で結ばれた同社の約90社(職人数・535名)の協力会社の中には、代々小黒組一筋で2代目、3代目になる職人一家もあるという。ただ、リーマンショック以降の建設投資の減少もあって、鉄筋工の数はこの10年間で7万人から4万2000人に減り、職人の人手不足が顕在化しているという現実もある。
 そこで同社は、この状況を見越して4年前に施工部を立ち上げ、鉄筋工事経験者の直庸を開始。昨年4月には、主に工業高校や専門学校の新卒者8名を直用工に採用した。また、日本で学んだ外国人留学生を採用するほか、船橋工場を高校生の会社見学に開放するなど、鉄筋工事業のPRにも努めている。
「全室個室の『亀戸寮』の整備や待遇の改善は勿論、『地図に残る仕事』の魅力で、数多くの若者に当社の門を叩いて欲しい」とは、千代田社長の弁だ。
    
【会社データ】
本社=東京都江東区亀戸2―17―15
☎=03―3683―7511
設立=1954年1月
資本金=2400万円
社員数=110名
売上高=75億8000万円
事業内容=鉄筋工事業・とび土工工事業・建築工事業等
http://www.oguro-gumi.co.jp   

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