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毎日新聞出版『サンデー毎日』で連載中の「会社の流儀」がWeb版で登場。中堅・中小企業の隠れた素顔や取り組みを紹介します。

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第一織物(シリーズNo.1217)

世界の一流ファッションブランドが絶賛
メード・イン・フクイの超高密度織物

吉岡 隆治 社長

古くから繊維産業の盛んな福井県。「羽二重」に代表される絹に始まり、やがて人絹(レーヨン)、戦後はナイロンやポリエステルなどの合成繊維と、時代の移ろいとともに様々な織物を生産してきた。 
 戦後は大手繊維メーカーの進出が相次ぎ、各社が地元の機屋へ賃加工を依頼。大手の下請けとして、福井の繊維業界は大いに潤った。


 1948年設立の第一織物株式会社吉岡隆治社長)も、帝国人造絹絲(現帝人)の指定を受け産業資材織物の製造を開始。高度成長期以降はレジャー産業の発展もあり、ヨットやウィンドサーフィン用セールクロスの製造で業績を伸ばした。
 しかし、バブル崩壊の煽りを受け、本社工場を移転してまで準備を進めていたパラグライダー用クロスの生産計画が頓挫してしまう。
 そんな中、活路を見出したのがファッションアウター向け高密度合繊織物だった。96年に自社ブランドのポリエステル高密度織物「DICROS」を開発し、地元企業の協力を得て98年に韓国・中国、2000年に米国・欧州への輸出を開始した。
 ほどなくメード・イン・フクイの高い製品力が評価され、世界の一流ブランドが同社の「DICROS」を採用。海外セレブが愛用する高級ダウンジャケットにも欠かせない素材となった。今では自販率95%、売上の70%を輸出が占めるグローバル企業に成長した同社。一時は存続の危機に瀕した北陸の小さな機屋は〝日本の誇りとなった。


毎日ファッション大賞
第33回特別賞を受賞

 近年は二次製品の開発にも注力。大人の日本人男性のためのファクトリーブランド「IBUKI」の立ち上げやメーカーズシャツ鎌倉㈱とのコラボレーションなど、攻勢は止まらない。
 同じ北陸の機屋であるカジレーネ㈱、豊島繊維㈱と水平共同開発体「ホライゾンタルコープ」も発足。賃加工依存からの脱却を目指し、新商品開発と自立販売機会の開拓に挑んでいる。
 他にも試作品の生地を、未来を担うデザイナーの卵たちに格安で譲るなど、ファッション業界の発展を陰ながら支え続けている同社。これまでの功績が認められ、第33回毎日ファッション大賞で特別賞も受賞した。
「お客様や仕入先の支えがあってこそ。北陸の皆様に深く感謝しています」
 と話す吉岡社長は学業修了後、大阪の繊維会社に入社。東京支店の責任者として華々しく活躍するも、父君の命で家業に入り、31歳で2代目社長に就任した。
 社長としての最初の仕事は、生産設備の近代化と熟練社員のリストラ。この時の経験が、今日まで貫く「社員が幸せになれる会社づくり」の礎になっている。
「北陸の機屋の誇りを胸に、当社はずっとモノづくりを続けていく。社名も変えません。今一度産業資材分野も拡充させ、様々な業界に付加価値の高い織物を供給していきたいですね」

【会社データ】
本社=福井県坂井市丸岡町四郎丸4―100
☎=0776―67―4370
設立=1948年5月
資本金=2000万円
従業員数=53名
事業内容=ファッション衣料織物の製造・販売など
http://www.dicros.co.jp

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