工業用製品から無限大のフィールドを切り拓く「前のめり経営」で勝機を掴むバイタリティー 小泉 徹洋 社長
中小企業が直面する「事業承継」という最大のテーマ。この低成長時代に会社を守り、永続的に発展させるために真価を問われるのが新たなリーダーのバイタリティーである。「中小企業は経営者次第。〝何を売るか〟もトップの意思だけで決まります。私の経営は常に前だけを見る『前のめり経営』。しかし、前に進む時は8割の勝算がなければスタートしません。表からは〝成功〟という結果しか見えませんが、その過程で他社の数十倍もの情報を収集し、取捨選択と分析を繰り返しています。お客様のニーズを徹底的にリサーチし、成功へと結びつくストーリーを見つけ出せば、失敗しないのです」 と話すのは司ゴム電材株式会社の小泉徹洋社長。工業用機械に用いられるゴム製品の販売会社として、1959年に父君が創業した同社の二代目社長である。
高度経済成長期に需要の拡大と変化に対応しながらゴムから樹脂、そして金属部品へと製品領域を広げ、着実に業績を伸ばしてきた同社。業態もメーカーとしての機能を増やし、ハイレベルの技術と先端設備・機器を有するモノづくりの総合企業へと変貌を遂げた。 しかし、バブル崩壊によって業績は悪化。30億円まで着実に伸びてきた売上が下降線を辿る中、救世主の如く辣腕を振るったのが小泉社長である。工業用ゴム製品の大手メーカーで修業した後、同社に入ったのは今から22年前のことだ。 中央大学理工学部を卒業し、技術畑を歩いてきた小泉社長だが、入社初日から担当したのは営業。多くの学びと経験を得ながら現場を奔走する中で確信した。 画期的なモノを〝作る〟よりも、モノを〝売る〟方がはるかに難しい――。「良質なモノづくりは優秀な技術者がいれば少数でもできる。しかし、『売る力』は会社の文化、ポテンシャルとして備えなければ育ちません。少なくとも10年はかかります」(小泉社長) かくして、「売る力」の強化に乗り出した小泉社長は積極的に営業社員を採用し、自身が一から積み上げてきたノウハウを惜しげなく部下の指導に注ぎ込んだ。 さらに、小泉社長が狙いを定めたのはニッチなマーケット。小さくても将来性ある分野でトップを目指す〝攻め〟に転じたのである。「マーケティングで最も大切にすべきことは市場の全体を捉え、隙間を見つけること。お客様に喜んで貰える製品は常に困り事の隙間にあるのです」(小泉社長) 早速着目したのがエレベーターの機能部品。大規模な設備投資で金属加工分野の製造力を強化し、同社の売上はV字回復を果たした。 そして、その後の躍進を決定づける大きな転機が訪れる。エレベーターが各階停止時に信号を送る制御装置「リミットスイッチ」の開発だ。従来、大型の金属製であった「リミットスイッチ」を、小泉社長がクライアントから「樹脂製で小型化できないか」と依頼を受けたことが原点。現在、「リミットスイッチ」は同社の主力製品として国内トップクラスのシェアを誇る。 M&A戦略で事業拡大エレベーター部品で飛躍 エレベーター部品をきっかけに製造力と開発力が強化され、営業力も育ってきた8年前、小泉社長は同社を引き継いだ。堅実な無借金経営を続け、万全の形で事業継承した父君に対し、敬意と感謝の想いを語る。「売上を倍増させるより、創業者として『0』から30億まで伸ばす方が明らかに大変。私が頑張って来られたのも、新しいことを勉強して広い知識とノウハウを培い、仕事を『勝手に断らない』という社風を作り上げた、父の力が大きいと実感しています」(小泉社長) 父君が大切にしてきた従業員たちを守り、さらに会社を成長させるため、小泉社長が挑戦したのがM&Aである。中でも、板金製造会社からの事業譲渡によって5年前に発足した㈱司冠栄製作所は同社のフィールドを大きく拡大し、他社との差別化を実現する重要なポジションを担っている。「金属部品から板金に展開し、アッセンブリー(組立)までの一貫体制を構築していることが当社の強み。『技術工業系』という本線を崩すことなく、多種多彩な製品分野に事業を拡大できるのです」(小泉社長) 買収前に赤字会社であった司冠栄製作所は初年度から黒字化。現在、約100名の従業員と20億円規模の売上を有し、エレベーターや駅のホームドア、食品機械、航空機関連など活躍の場を急速に広げている。M&Aの活性化を図る小泉社長は自身の方針を、こう語る。「当社も買収先も、全ての従業員が幸せにならなければ絶対に行いません。高い技術力を持ちながら業績不振や後継者不在に悩む会社など、本業から逸れずに付加価値が高まる会社をグループに入れ、お互いを成長させることが目標です」 司冠栄製作所のM&A時も一切リストラを行わず、初年度から賞与を支給。従業員のモチベーション維持が業績向上の要因となった。売上100億円を射程にアグリビジネスにも進出 高い勝算に基づく「前のめり経営」で拡大路線を進み、同社グループの勢いは売上100億円に迫る。将来の上場も視野に入れる小泉社長は、次のフィールドにアグリビジネスを選んだ。「経営は〝付加価値を増やす〟こと。上場するためには、もっと面白い発想と斬新なビジネスモデルが必要です。研究開発への投資と努力を重ね、『植物工場』の小型化に成功しました。据付工事部隊の強化も進めていきます」(小泉社長) 大手企業が続々と参入して脚光を浴びる「植物工場」だが、大型の設備を導入・維持するためには億単位の資金が必要となる。そこで同社は板金やアッセンブリーで培ったハード作りのノウハウを生かし、レタスなど葉物の栽培を3000万円程度から始められる植物プラントを開発。現状、国内では採算面で上手くいっていない大型植物工場に対し、その理由を全て解決した画期的な小規模植物工場システムを提案する方針だ。 今月14日~16日に東京ビッグサイトで開催する「アグロ・イノベーション2016」にも出展。小泉社長の新たな勝算に、次の選択肢を探す投資家たちも大きな期待を寄せる。【会社データ】本社=埼玉県蕨市塚越2―19―21 ☎️=048―445―7532設立=1959年2月資本金=6000万円社員数=280名(グループ合計)売上高=約95億円(グループ合計)事業内容=工業用ゴム・樹脂金属関連製品の製造・販売、金属板金プレス加工、各種アッセンブリーなどhttp://www.tsukasa-net.co.jp
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