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毎日新聞出版『サンデー毎日』で連載中の「会社の流儀」がWeb版で登場。中堅・中小企業の隠れた素顔や取り組みを紹介します。

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三谷合金製作所(シリーズNo.1753)

エッジワイズコイル製造のリーディング企業
日本の水力発電を支える〝技術と創意の三谷〟



三谷 哲男 社長


 資源が乏しい日本において、貴重な純国産のエネルギーとして近年再び注目を集めている水力発電。京都府宇治市に本社を置く株式会社三谷合金製作所は、水力発電機に欠かせないローター(回転子)に用いられる「エッジワイズコイル」の製造会社として、国内トップクラスの技術と実績を誇っている。
「河川と山地に恵まれた地形を最大限に活かすことができ、極めてクリーンな水力発電は日本に適しており、エネルギー問題の救世主になり得る発電方式だと思います。私たちは、電力という『世の中に無くてはならない仕事』に携わる誇りと責任感を持ち、たゆまぬ創意工夫を続けています」
 と話すのは、2代目の三谷哲男社長。1996年に創業者である父君の後を受け継いで以来、〝技術と創意の三谷〟と謳う同社のモノづくりを四半世紀近くにわたって牽引している。


 銅合金鋳物の製造会社として、京都市内で同社が創業したのは53年。当初30年間は電車モータの部品となるコイルやコア(鉄芯)、ブラシホルダーなどを製造し、旧国鉄や私鉄が運行するほとんどの電車モータに従事していたという。
 しかし、80年代に入り、従来の直流から交流へと電車モータの方式が変換されることを受けて徐々に製造量が減少。先代の決断によって同期電動機・水車発電機に使用されるコイルの製造や界磁ポールの組立に業態をシフトした。
「電車モータも発電機も原理や構造は似ているので、先代は電車モータで培ってきたノウハウをそのまま生かせる事業だと判断したのでしょう」(三谷社長)

人・技術・設備が育む
重電機メーカーの信頼


「エッジワイズコイル」とは、平角線状(板状)の銅線を本来は曲げにくいエッジ(短辺)側に曲げたコイルの総称。一般的な丸線コイルよりも断面での占積率と放熱性が高いため、大型の発電機・電動機の回転子に用いるコイルとして最適だと言われている。
 しかし、大型のエッジワイズコイルを作るためには、相当の強度を持つ特殊な設備と専門性が高い技術者の存在が不可欠だ。同社が大手の関連会社ではなく、日本では稀な独立系メーカーとして技術を極め、内外輪の厚差を極限まで抑えた精度が高い仕上がりを実現できるルーツは、電車モータで取引していたM社が所有する大型設備を引き取り、約1年半をかけて徹底した技術指導を受けたことにある。
「当時はM社の皆様に鍛えて頂きました。これらの設備は定期的な診断とメンテナンスを受けながら、今も現役で活躍しています。他にも、当社には〝故障すると日本の水力発電が困る〟ほど希少な設備がありますよ」(三谷社長)
 M社だけでなく、他社からの受注も増やし、品質に対する厳しい要求に応えながら信頼関係を醸成してきた同社。その後は電車モータの仕事で知り合った他の重電機メーカーへの顧客開拓に取り組んだ。
「関東のメーカーとも、『M社が信頼する会社なら安心』と、スムーズにお付き合いを始めることができました。現在は、ほぼ全ての国内主要メーカーから製造依頼を頂いており、海外の重電機メーカーからも引き合いがあります」
 と、三谷社長が話すように海外でも活躍する同社のエッジワイズコイル。M社を含む国内大手3社で結成された「日本連合」が、アルゼンチンとパラグアイの国境近くに建設された「ヤシレタ水力発電所」で発電機10台の製作を受注した際は、使用される840個の凸極界磁ポールを全て同社が手掛けたという。


次の世代へ武器を残す
女性社員の活躍にも期待


 類まれな技術と設備を整え、エッジワイズコイルに用いる巻線の製造から絶縁加工、大型ローターの組立まで全ての工程を自社一貫体制で担う同社。日本全国に大小合わせて1747カ所(2019年11月・経済産業省統計)ある水力発電所から寄せられる、トラブル発生時の修理やリプレイスの依頼に短納期で対応している。
 もはや、日本の電力業界には欠かせない存在として確かな地位を確立している同社だが、三谷社長は次の世代へと継承する新たな土台作りを進めている。
「先代は少々経営が苦しい時でも目先の利益にとらわれることなく、将来のために設備や人材を入れ、武器を整えてくれました。私も人材を育て、ベテランから若手への技術の伝承、社員たちが働き易い環境づくりに力を入れて次のリーダーに武器を残していきたいと思います」(三谷社長)
 他社での修業を経て5年前に入社した長男をはじめ、次の時代を担う社員たちが支え合い、スクラムを組んで「三谷品質」を守る体制づくりを目指している三谷社長。仕事に必要な免許取得や技術研修だけでなく、リーダーシップやコミュニケーションの向上を図る研修にも積極的に社員を参加させ、発表会も行っている。
 また、ここ数年は順調に若手社員が入社し、福利厚生や研修制度をより充実させたことによって社員の定着率向上にも繋がっているという同社。三谷社長は、既に現場の第一線で活躍している女性社員たちを高く評価し、さらに人数を増やしたいと考えている。
「横着せずに約束、納期、品質を守ることが当社のポリシー。大風呂敷を広げることなく、今の設備と人材、技術を守りながら着実に成長していきたいですね」
 と三谷社長。同社は宇治川の畔から日本の電力、世界の産業を支え続ける。


本社=京都府宇治市槇島町吹前107―1
℡=0774―24―1925
創業=1953年3月
資本金=4500万円
従業員数=48名
売上高=6億円
事業内容=各種発電機・電動機用界磁極の製作
http://www.mitanigoukin.co.jp

拍手[23回]

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コメント
1.ますますのご発展を期待しています ユニさん (2020/03/24 09:40)

堅実な経営と確実な品質で信頼しております。
ますますのご発展を期待しております

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