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毎日新聞出版『サンデー毎日』で連載中の「会社の流儀」がWeb版で登場。中堅・中小企業の隠れた素顔や取り組みを紹介します。

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呉(おう)建築設計事務所(シリーズNo.1349)

広い視野で〝気が利く〟一級建築士事務所
居心地の良さとトータルな建築設計を提案


 呉 日煥 社長 

「建物は居心地の良さが一番大事。私は『なぜ人は、その場所に居心地の良さを感じるのか』に興味があります。設計という仕事には〝人〟に対する関心が生きてくるのです」
 と話すのは、有限会社呉建築設計事務所呉日煥社長。1987年に起業してから29年間、中野の地で建築設計事務所を営んでいる。
 韓国在日二世として長野県南佐久郡で生まれた呉社長は幼き頃、土木と製材の事業を営む実家の片隅で図面を書き、その面白さに心を奪われる。やがて芝浦工科大学建築工学科を卒業し、医療福祉建築で名高い建築設計事務所に入社。意匠と構造の双方に通ずる設計のイロハを学んだことが自身の提案に生かされている。


「現在は設計業務も分業化されていますが、建物をトータルに捉えることで、行き詰った時に問題点がわかり、最適な解決法を提案できる優れた設計スタッフになれるのです」(呉社長)
 友人から依頼を受けて96年に設計した秋田県のユニットケア型介護老人保健施設「サングレイス」は、その代表例。以降、住宅やオフィスなど多彩なプロジェクトで建築・構造設計監理業務に携わり、〝気が利いた〟仕事ぶりが施主からも高い評価を集めてきた。昨年は、埼玉県で食品パッケージなどを印刷する橋本セロファン印刷㈱の本社と工場を手掛け、大型のグラビア印刷機を導入するために空調設備の配置が難しいプロジェクトを成功へ導いた。
 
建築士法改正に期待
〝脂汗〟が幅を広げる

 一般社団法人東京都建築士事務所協会の会員として、中野支部長を務めた経歴を持つ呉社長。業界の発展に尽力する中、昨年6月の建築士法改正に対し、頻繁に大きなプロジェクトを望めずに手間仕事に追われる設計事務所が生き延びていくための柱になると期待する。
「小さな規模の事務所にも骨のある設計をする建築士は沢山います。しかし、彼らは自分で顧客を探すのが難しく、仲介者の意向に合わせてオリジナルのカラーを出せないことが多い。ディスカウントの風潮が強まれば技術のレベルアップが進まないだけでなく、トラブルも増え、従来の法律では建築士に課せられる責任の範囲が不明確でした」
 延べ面積300平方㍍超の建築物は、建築士が顧客と直契約できるようになった反面、責任も大きい。呉社長は若手建築士たちにエールを送る。
「人間は刺激がないと一肌脱げない。平坦な道を歩く人より、大波小波に揺られて脂汗を流す人の方が提案の幅が広がります」
 日本で生まれ育っても帰化せず、本名で事務所を開いた呉社長。感受性豊かに、広い視野で社会を見てきた自身の流儀を語ってくれた。
「自分の環境に敢えて蓋をせず、蓋を取る生き方を貫いてきました。損得ではなく、社会の一員として国際的な見方や人生観を感じ、『おもしろい人』になることが究極の目標です」

【会社データ】
所在地=東京都中野区新井2―7―10 401号室
☎=03―3319―4630
創業=1987年10月
事業内容=建築設計及び工事監理、構造設計、耐震診断・耐震補強
http://www.oh-arch.com

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