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毎日新聞出版『サンデー毎日』で連載中の「会社の流儀」がWeb版で登場。中堅・中小企業の隠れた素顔や取り組みを紹介します。

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日東工機(シリーズNo.1539)

創業75年、溶接業界を支える老舗卸売企業
人を結び信頼の「絆」を繋ぐ会社を目指す


吉岡 良三 社長

 今年、創業75周年を迎える日東工機株式会社は、溶接材料・溶接機をはじめ、産業機器・工作機械・工具類など加工・製造の現場の多様な商品を取り扱う老舗卸売企業だ。
 永年の業歴を通じて、常に「メーカー」と「ディーラー」を繋ぎ、日本が世界に誇る金属加工技術である「きる」「まげる」「つなぐ」「みがく」の4大技術を中心とした様々なニーズに応える新しい商品を開拓、「ユーザー」の作業しやすい現場環境の構築を支える提案活動を実践してきた。
 同社は、1943年に電気及び酸素溶断器具材料の販売で創業した。
 三代目の社長である吉岡良三社長は、石川県小松市出身。高校卒業後、上京して母校の先輩が創業した同社に入社した。
 日東工機が本社を置く港区三田界隈は、今でこそオフィスビルなどが建ち並ぶビジネス街だが、吉岡社長が入社した60年代当時は、映画「ALWAYS三丁目の夕日」さながらの風情で、自動車修理工場など町工場が多く集まる街だった。同社は、こうした地元の工場を得意先に溶接機・溶材等の販売をしていた。
 その後、高度経済成長を背景として次第に事業を拡大した同社は、業容拡大を図り溶材販売店から卸売業へと事業転換する。
 現在では、営業エリアも拡大し、北海道・東北・関東・甲信越・東海・中部地域に14の営業拠点を配して、日本を代表する大手企業など100社を超えるメーカーの商品を、1000社を数える販売店ディーラーを通じてユーザーの加工・製造の現場に提供している。取扱商品も多岐にわたり10000点を超えるという。


「相手の立場になって信頼を得る」を理念とする同社。
「メーカーに代わって積極的に新商品・新技術の情報を販売店に提供し、また、販売店を通じて得た市場ニーズをメーカーに的確にフィードバックすることで、メーカーの商品開発や販売店の市場開拓に貢献することが卸売業の存在価値です」
 と語る吉岡社長は、メーカーと共に企画・開発した自社ブランド「NT商品」を手掛けるなど新たなチャレンジにも余念がない。 
「技術の進歩や変化する市場ニーズに対応してメーカー、販売店、私達が共に発展するためには、三者相互の信頼の『絆』が大切です」
 という吉岡社長が2000年の社長就任以来、最も大事にしているのがこの「絆」という言葉だ。同社は、この「絆」をより深めるための様々な取り組みを展開している。

様々な取り組みで
信頼の「絆」を繋ぐ
 
 その一つが毎年実施している「チャレンジセール」だ。セール期間中の同社取扱商品の販売実績でポイントが付き、達成したポイントにより海外または国内旅行へと招待する。

 40周年を機にはじまったこの企画は、これまで35年間続く恒例の人気イベントだ。同社においては、日頃お世話になっている販売店やメーカーの人々と共に旅行を楽しみ親睦を図ることで、より一層強固な「絆」を結び信頼を深める大切な機会となっている。東日本大震災が起きた年から3年間は、旅行を自粛し東北6県の名産品プレゼントに切り替えたが、これがかえって東北地方の取引先には喜んでもらえる結果となったという。
 二つ目が、夏・冬の年2回発行する「チャレンジ通信」だ。毎回交代で、若手社員を中心に担当者を募り作成される商品カタログで、従来の取扱商品の枠に囚われない柔軟な発想で、広範囲な商品を紹介する。時には、夏号で塩飴・そうめん、冬号で贈答用のハムなどが紹介されることも・・・。
 このカタログは、販売店の販促や顧客ユーザーとの話題づくりのツールとして活用されている。
 また、2年ごとに台東区浅草の施設を借切り開催する同社独自の展示会「チャレンジフェア」も好評だ。
 メーカーごとにブースを設置して販売店やユーザーを招待する。販売店・ユーザーには、新商品や人気商品の説明を直接メーカーから聞くことのできる機会であり、メーカーには商品のアピールに加え、販売店・ユーザーの生の声を聴くことができる貴重な場となっている。
「様々な技術が開発される中で、金属加工の分野も溶接から接着剤の使用へと変容しつつあります。卸業者としての役割を果たすため、常に時代や市場の変化に合わせた事業展開、商品展開を販売店、メーカーの皆さんと共に進めて行きたい」
 と吉岡社長は語る。
 こうした日頃の事業活動はもちろん、「絆」を大切にする努力で信頼と実績を積み重ね経営基盤を強化してきた同社は、社員同士の「絆」、会社と社員の「絆」も大切に、全ての社員がやり甲斐を持ち、楽しく仕事ができる環境づくりにも力を注いでいる。

新給与体系を導入
理念を次世代に継承する

 毎年、年初には全社員が集まる社員新年会を開催。その際、社員一人ひとりが会社への意見や希望を「自己申告書」として提出。吉岡社長自らがそのすべてに目を通し、会社として応える取り組みを実行している。
 また、昨年から大手シンクタンクの協力を得て準備を進めた新たな給与体系を今年から導入するという。
「今の日東工機の現状に相応しく、外から見ても恥ずかしくない給与水準に引き上げます」(吉岡社長)
 毎年、新卒採用も積極的に実施している。期待する人物像は「人とのコミュニケーションが取れる人」だ。
「卸業として、販売店とメーカーの『絆』を構築する会社、そしてモノづくりの手助けをする会社という理念を次の世代にもしっかりと継承して行きたい」
 と吉岡社長は語る。 

【会社データ】
本社=東京都港区三田5―6―7
☎=03―3453―7151
創業=1943年10月
資本金=5億8150万円
従業員数=110名
売上高=120億円
事業内容=溶接材料・溶接機、産業機器、工作機械、工具類、荷役運搬機器、検査・測定器等の卸販売
http://www.nittokohki.co.jp

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