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メディポリス国際陽子線治療センター(シリーズNo.1783)

がんを切らずに治す陽子線治療で
すでに4000人の症例実績を誇る


荻野 尚 センター長


 三大がん療法の一つ「放射線治療」の中でも世界的に注目されている陽子線治療。古くから湯治場として知られる鹿児島県指宿市にあるメディポリス国際陽子線治療センター(荻野尚センター長)は、2011年1月に治療開始して10年目を迎えた。すでに約4000人のがん患者の治療を実施し、国内の陽子線治療施設ではトップクラスの治療数を継続している。
陽子線治療とは、水素の原子核である「陽子」を大型加速器「シンクトロン」で光速の70㌫程度まで加速させ、体内のがん病巣にピンポイントで照射する治療法。正常な細胞にほとんど影響を与えずに、がん細胞の核にあるDNAを直接攻撃して増殖を防ぐ。


 患者は可動式ベッドの上で仰向けになり、オーダーメイドの装具で体の位置を固定。360度回転し、2500方向の角度を設定できる「回転ガントリー」を稼働させ、陽子をがん細胞に向けて狙い撃つのだ。
こうした治療特性から、体への負担や副作用が軽い陽子線治療は、手術ができない高齢者や麻酔をかけられない患者でも受ける事ができる。血液のがんを除く様々な固形がんの治療実績があり、18年4月からは、前立腺がんと頭頸部がんなどの治療で公的医療保険の適用対象となった。
 同施設では進行性すい臓がんを皮切りに、症例数で半数近くを占める前立腺がんや頭頸部がんなど、対応がん種を着実に拡張。陽子線治療のエキスパートと先端医療を担う多彩な設備、他の医療機関との連携で実績を積み上げてきた。全国各地に相談窓口を設置し、TV会議によるセカンドオピニオンも対応している。
 
リゾート滞在型治療
乳がん治療にも挑戦

 また、一日一回の治療時間が15~30分と短く、入院せずに2~7週間の外来で治療できる陽子線治療。東京ドーム77個分もの広大な敷地を持つ「メディポリス指宿」に建つ同施設は、リゾートホテル「指宿ベイヒルズ」を併設し、治療以外は自由に行動できる。錦江湾を眼下に望む見事な眺望と露天風呂、旬の食材を使った料理、そして自然との触れ合いが心を前向きにしてくれる。
 敷地内に地熱発電所を設けて余剰熱をハウス栽培に再利用するなど自然に優しい取り組みが嬉しい。メディカルツーリズムの観点からも興味深い「リゾート滞在型がん治療」で脚光を浴びる同施設は、医療の質と患者の安全性を審査する国際認証機関JCIの認定を九州で初めて取得。注目すべきは10年に及ぶ臨床研究を終え、今年から自由診療として「早期乳がん」「乳がん部分切除後」の治療を開始した。
 これまで手術が主流であった乳がんの治療と再発防止に〝切らない〟がん治療で挑む同施設。一人でも多くの患者の命を救い、QOL(生活の質)を維持する新たな選択肢として、その可能性に期待したい。

【施設データ】
所在地=鹿児島県指宿市東方4423番地
☎=0993―23―5188
設立=2006年3月
設備投資額=108億円
職員数=54名
事業内容=がんの陽子線治療など
http://medipolis-ptrc.org

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