トヨタ車体の新規開発技術の事業化で独自色「人と地球に優しい製品」創りで社会に貢献
佐口 温 社長
リニアエンジンで駆動する自動ドアがあるのを御存知だろうか。「リニア」と言えば中央新幹線が思い浮かぶが、非接触で推進力を発生させるリニアの基本技術を自動ドアの駆動装置に採用、その静粛性・安全性や停電時の操作性が評価されて、病院・福祉施設や食品工場などで急速に導入が進んでいる。 その製品を開発・製造するのは、トヨタグループでミニバン・SUV・商用車・福祉車両などの開発・生産に携わる完成車両メーカー、トヨタ車体の100㌫出資企業として、1974年9月に愛知県刈谷市で設立されたエース産業株式会社だ。
当初、溶接スポットガンの修理工場として発足した同社も時代を経るごとに、トヨタ車体が新規開発した製品を量産化する製造子会社として成長。機械から電機、樹脂・電子部品まで、様々な分野の生産技術・知識を社内に蓄積してきた。
現在の主要事業である福祉ユニットでは、福祉車両ユニットの開発段階から参画。96年のサイドリフトアップシートの開発に始まり、回転シート、回転チルト、リヤリフターまで、高品質でコスト競争力のある製品を生産している。リフトアップシートだけを取って見ても、世界の21車種に導入されている。 樹脂・電子部品分野では、車室内灯や木目パネルからスライドドアの制御基板、超小型EV「コムス」用基板まで多品種少量生産に対応。制御基板の製造現場から図面完成度向上のために、顧客の設計部門に製造要件の提案も行っている。 また、設立当初の溶接スポットガン修理に端を発するメカトロ部門では、09年に工場内無人搬送機「エースマン」の生産を開始。磁気テープを貼った経路に沿って走行する装置で、軽量・小型、1㌧まで牽引可能な馬力を持つ上、導入コストも安価なことから各種の工場で気軽に採用されている。この「エースマン」の機構は、高齢化が進む農業分野にも活用の道があると検討が進んでいるという。安心・安全を提供するオゾン・リニア製品事業 一方、89年にトヨタ車体が保冷車荷室用オゾン脱臭機として開発し、同社がその製造に当っていた「オゾンフレッシュミニ」は、その技術を厨房、トイレ用などのオゾン除菌・脱臭機として拡大・発展。08年に事業移管を受けて以降は同社が、オリジナル製品「オゾンだっしゅシリーズ」の製造・販売を引き継いでいる。 オゾンとは3つの酸素原子からなる気体で、酸素に戻ろうとする強力な酸化反応で空気中の悪臭物質や有害な細菌と結合、除菌・脱臭に高い効果を発揮する。薬品を使用しないため環境にも優しく、オゾン濃度をコントロールすることで、人体にも安全・安心だ。 同社では、オゾン水とオゾンエアーを生成する「オゾンだっしゅツインシリーズ」のほか、東京消防庁にも採用された手軽にオゾン水洗浄できる「オゾンだっしゅポータブルシリーズ」、水を使用できない施設の除菌・脱臭用の「オゾンフレッシュシリーズ」など、多機種を用意してスーパー・食品加工場から厨房、トイレ、床洗浄まで、様々な施設の衛生面の強化を強力にバックアップしている。 特に「ツインシリーズ」は、昼はオゾン水の脱臭・除菌力で作業工程をクリーンに、夜はオゾンエアーが空中浮遊菌や臭いまで脱臭・除菌するもので、ある大手スーパーでは全国の食料品売り場のバックヤードに導入済みだという。 ところで、冒頭に述べたリニアエンジン開発は、85年にトヨタ車体が1BOX車のリアウィンドウのカーテン開閉用にリニアモーターを開発したことに遡る。 自動ドアのリニアエンジン技術を保有する企業は世界でも2社のみと言われるが、以来その技術はプレハブ冷蔵庫用自動ドア等の駆動装置に発展。10年に同社が事業移管を受けて以降、図書館並みの静粛性や埃が出ない清潔性、停電時でも手で開けられる操作性が求められる病院や福祉施設、精密機械工場、食料品工場などで導入が進んでいる。 他にも、ドアに挟まれた時の力が弱いことや、少ない力で開閉できるアシスト機能など、最新の「リニアエンジン」には便利な機能が搭載されている。同社では、従来の自動ドアにはないこれらの特性は、高齢者の住む戸建て・集合住宅やオフィス・店舗でも歓迎されると見ている。「明るく・楽しく・元気よく」若手社員も即戦力「生産技術の側面で、トヨタ車体と共に歩んで44年の実績を持つ当社には、沢山の技術的蓄積・資産があります。オゾン製品・リニア製品など、オリジナル製品の一層の普及を通じて自社の実力をアピール。若手社員の採用と育成にも力を入れ、『人と地球に優しい製品』で豊かな社会創りに貢献していきたい」 と意欲を語る佐口温社長は、東京理科大学を卒業後トヨタ車体入社。車両ボデーの設計に携わる中、開発担当の役員を歴任。33年間の勤務を経て15年4月同社社長に就任した技術畑出身のエンジニア型経営者。 就任以来、トヨタ車体の生産方式をエース産業用にアレンジし移植を図るとともに、これまで作業員個々の「カンとコツ」に頼っていた作業を、誰でも出来るように一般化して生産性の向上をもたらす合理化を推進。「やりにくい作業」を改善しようという掛け声のもと、作業員からも続々と有効な改善提案が上がってくるようになったという。 一方で、佐口社長のモットーは「明るく・楽しく・元気よく」。女性の多い職場に女性チームリーダーを任命し、若手社員にも責任の伴う業務を任せて一人立ちを促進するなど、職場は活気に満ち溢れている。一昨年から新卒採用を再開し、今年4月には地元出身の大卒社員3名が入社する。 毎年6月には、「従業員へのお礼の会」と称して立食懇談パーティーを開催。秋には全従業員でのバス旅行を催行するなど、従業員の一体感の醸成と動機付けに心を砕く佐口社長は、「当社の全製品の提供を通じて、お客様に『安全・安心』をお届けするためにも、従業員が生き生きと働ける『明るく・楽しく・元気な職場』創りに努めたい」 と、抱負を語る。 【会社データ】本社=愛知県刈谷市八軒町1―8☎=0566―25―1441設立=1974年9月資本金=3000万円売上高=60億円従業員数=130名事業内容=福祉製品・自動車部品生産、オゾン・リニア製品・AGV製造・販売http://www.ace-kk.co.jp
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